最初に今回作ったのは透析時の回路脱落など出血をいち早く知らせる出血感知センサーを作成しました。
しかも、センサー部はなんども使えて洗えて滅菌できる経済的で清潔なセンサで、フィルム覆われいる静電容量式の出血検知センサーです。
まずは動画からどうぞ↓
透析治療時に最も恐る事は、直接循環動態に影響を与える出血や過除水でしょう。
透析での血液ポンプは200ml/min以上で動作させる為、一度回路の脱落などがおこれば、5分で1Lの血液が漏出する事になります。
体重が40kg程度のおばあちゃんなら体内血液量は3L程度なので、1Lもの血液が体外に出るだけで失血死の危険さえもあります。
実際に透析回路の脱落や透析針の抜けなどで年間数件この失血事故が起こっているのです。
そういった事故のリスクを下げる為様々な工夫があります。
たとえば最近では当たり前になった、回路と針の接続をルアーロック(ネジ)化する事であったり、漏血センサーを設置するなどです。
また出血感知センサーなどは複数販売されています。
例えば↓とかです。
しかしなぜか他施設で普及するにはいたっていないのが現状です。
なぜこのような安全対策品が普及していないのか?というと結構コストがかかるのです。
年間で1件もあるかないか程度のリスクファクターに数万円から数十万円かけたり、設置するにも労力もかかるし・・・・・と考える施設が多いのです。
そこで、出血感知センサーを安価に導入できないか?を考えてみました。
現在、世に出回っている出血感知センサーは血液がセンサーに接触する事で、アラームを鳴らすという単純なものです。
そのセンサですが、血液が付着する事で動線→血液→動線という方向に電流が流れ、ただただシンプルに電流の流れを感知してアラームを鳴らすのです。
有名どころのブリーディングセンサーは上記シートを腕の下に敷き使用するので、もちろんこのシートセンサーは単回使用(ディスポ)となるわけです。
このディスポが高いわけですね。
透析治療の診療報酬は丸めなので、できる限り出費を抑えたい病院としては高いものは使いたくありません
そこで思いついたのがセンサーを繰り返し使用できるリユウス品があればと思い工作してみました。
リユウスにするには条件があります。
まず、水や血液で濡らしても滅菌や消毒ができるという事が必要です。
上記のブリーディングセンサは電極接触で感知する為一度汗や、水、消毒駅で濡らすと、電極が錆びたり、電極の接触抵抗が増えるので使い物になりません。(だから単回使用なのです。)
センサを静電容量式にする
ここまで説明したとおり、接触式のセンサが主流の出血感知センサですが、接触しても洗えたり、滅菌できればいいわけです。
そこで考えたのが、センサを静電容量式にしてしまう方法です。
2枚1組の電極を、外界と接さないように透明なフィルムでおおってしまうような構造にしてセンサとすれば完璧です。
これなら、簡単に滅菌できるし患者毎に揃えておけば少し汚れても洗えば済むし、経済的です。
このフィルム電極をセンサとする原理は結構簡単です。
ほぼこの電極はコンデンサといっていいです。
このコンデンサはフィルムに接触する物体の電動率と面積に比例した、静電容量になるはずです。
たとえばこのセンサに血液が付着するとします。
そうするとこのセンサの静電容量は増えるのです。
金属の電極は直接血液とは接触しない(フィルムでコーティングしてるから)ので綺麗ですし清潔です。
アルミ箔を2対に切ってそれをラミネート加工したセンサを作ってみました。
もちろんこのセンサの電極は外界と接しておらず、完全にフィルムで覆われいます。
ちゃんとセンサと機能するか透析液を使って実験してみます。
1cm刻みにセンサに印をつけて、その深さまでセンサを透析液(体の組成に似ている)に浸けます。
その時の静電容量をテスターによって読み取っていくのです。
その結果は↓
図より、静電容量と沈める水位がほぼ比例している事がわかりました。
これなら、この静電容量の変化から出血を判断できるようなセンサーとして使えそうです。
検知機構の考え方
センサー部はほぼ完成しました。
今度はこのセンサーを利用する検出器を考えます。
コンデンサは交流しか通しません。
交流電圧をセンサに印可した時、センサ部の静電容量の大きさででてくる電流量は変化します。
静電容量が大きければ電流も大きいのです。
その電流値は↓
印可する電圧と周波数は一定なので、変化するのはキャパシティのCです。
ですから、センサの静電容量によって電流値が変わるという事です。
この電流値を抵抗値に分圧させ、ある一定の電圧になればスイッチが入り、ブザーを鳴らすような回路を考えればOKです。
とてもシンプルで簡単です。
とりあえず、マイコンなどを使わずにタイマーIC555で交流矩形波を発生させ、センサから出てくる電流を電圧に変換し、それをコンパレータで基準電圧とくらべ、ある一定以上になればアラームをならす回路を作成しました。
こちらが回路図です。(稚拙な回路図ですなんせ、素人が作ってます。)
もちろん臨床では使っていませんが、こんなセンサーが世に出たらもう少しは出血に関する安全対策が進むんじゃないかと思ってます。(安価に導入できるデバイスが増えればという意)