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漏れ電流計(MD)の作成

2017年2月15日 私の初めての書籍が発売されました。 手前みそですが、基本を押さえつつアナログ回路が学べ、実践に富んだ内容になっています ぜひ読んでみてください。 ↓詳しくは下記画像をクリック↓

今回は漏れ電流計を自作!!

制作事例だけ書こうとしましたが、勉強の為に漏れ電流についても再勉強です。

漏れ電流計の意味や仕組みなど理解している方は目次の実際の制作までぶっとばしてもOKですよ。

〜目次〜

 

 漏れ電流計について

 

人間の感知電流と周波数の影響

 

漏れ電流計のしくみ

 

実際の制作

   

漏れ電流について

皆さん、漏れ電流という言葉を聞いた事があるでしょうか?
 
医療機器に関わらず”電気の力”で動いている機械にはこの漏れ電流による危険をはらんでいます。
 
家庭内の電化製品でもこの漏れ電流などに関しての規定があるのですが、医療機器となるとこの規定はさらにシビアに決まりが設定されています。
 
さて、まず漏れ電流とはなんぞやなんですが、言葉どおり漏れている電流の事です。
電気・電子機器というのは、当然電気を利用して動きます。
 
この電気を消費しているのが、機械の中にある抵抗やコイルやコンデンサや集積回路、など様々な素子になります。
 
本来、電気は全て100%それらのパーツによって消費されるべきなのですが中には絶縁が不適切で外装ケースに電流が流れていたり、アース線に電流が迂回して流れていたり電磁誘導で外装やアースに電流が流れていたりする場合があります。
 
これを漏れ電流といいます。
英語ではリークカレントね♡
 
この漏れ電流が大きくなると>>>
たとえばアース線に大量の電流が流れると、これを地絡といいます
聞き慣れた言葉に変換すると、”ショート”です。
 
もちろんこれは機器が故障していると判断するわけなんです。
医療機器ではショートまではいかないけど何故かアースや外装のケースを介してアースに電流が流れる状態を絶対に許していません。
 
それは医療機器では少しの電流でも、手術や処置によっては患者さんに影響がある可能性があるかもしれないからです。
 
特に外装漏れ電流なんかは、皆さんが感電する危険がありとてもあぶなーいのです。
   
臨床工学技士のみなさんは復習です
 
漏れ電流には(古いCEだと下記のように習ったでしょ?)
ちなみにですが、知らない人が多いのですが新しい漏れ電流規格 JIS0601-1:2012がすでに施行されており上記の漏れ電流の表記は古いです。
2017年6月1日からはJIS0601-1:2012の新規格で計測しなければなりませんよぉー!!
に変わっています。 接地漏れ電流の許容値が変更されていますが、結局接触電流が変更されていないのでほぼ変わっていないのと同様です。 また数値がmAからμAに変わっていたり、患者漏れ電流が合計の値の必要になったりと細かい所が改正されています。 学生さんは教科書に載ってますね。  
   
これらの項目をチェックするのには測定器が必要なのですが、今回はその測定器を自作しちゃおうという計画でーす。
   
市販されているものもありますが、どれも高く、重く持ち運びにくいです。
本格的に点検などをする目的なら市販品をおすすめします。
   
今回もお遊び程度で自身の知識の蓄積という意味でこの測定器を自作し漏れ電流の知識向上を図ります。
 
ちなみにこの測定器の事をMDといいます。
臨床工学技士の標準テキストではおなじみです。
     

人間の感知電流と周波数の影響

 
まず、人間はどのくらいの電流で感電するのでしょうか?
だいたいですが1mAから電気の存在を感じはじめます。
そして⬇
 
こんな感じで感電します、ただし電流を流す力、すなわち電圧がでて初めて電流がながれます、電池を電源とした電子工作で20mAとか使うので感電しないのか?なんて心配しなくて大丈夫です。
 
人間には抵抗があるので電池など流す力がひ弱な電源では感電しませーん。
ただし、電池を100本直列とかは危ないですよ。
     
本題にもどりましょう。
   
人間の最小感知電流はおおよそ1mAです。
   
さてここで、感知電流に及ぼす周波数の影響をみてみます。
上図は周波数による感知電流をグラフ化したものです。
三つの線は被験者の群衆を表しています、
一番上が被験者の99.5%が該当する値
真ん中は被験者の50%が該当する値
下は被験者の0.5%が該当するというグラフです。
よくみてみると横軸の周波数1000、すなわち1kHzのところの縦軸が1mAですね?
それ以降はどのグラフ線も周波数が上昇するにしたがって感知電流が指数関数的に上昇しています。
   
簡単に言うと周波数があがれば感電しにくくなるという事です。
     

漏れ電流計(MD)のしくみ

端的に言うと漏れ電流計(MD)は人間にとって有害な1KHz以下の交流電流を計測する計測器です。
 
そしてその仕組みはシンプルで簡単です。
     
実際の回路図
   
〜回路の説明〜
 
人体に有害な1kHz以下の電流を計測する仕組みを説明します。
 
R1=10KΩとC1=0.015μFですが、これがフィルタになります。
このフィルタが1kHz以上の電流をカットしそれ以下の周波数の電流だけパスしているのです。
 
ちなみに低い周波数は通すのでその名もローパスフィルタと言います。
 
ちなみこのローパスフィルタの遮断周波数は計算式によって求める事ができます。
 
f=1/2πτ
τ=CR です。
実際に計算してみましょう τは抵抗とコンデンサをかけると求める事ができますので
0.015×10^-6×10^3ですね
f=1/2πτに代入します。
おおよそf=1062となりました。
   
R2の1kΩについてはこれは人体の代表的な抵抗値を想定しているそうです。
     
そして電圧計ですが、電流を計測するのに電圧計?
って思いません?
   
じつは電圧計は1kΩと並列に入れてあるので電圧計の測定値がそのまま電流値になります。
電流計算はI=V/Rですね。
 
抵抗値は1KΩなので、たとえば電圧計の指示値が1mVだったら、1μAと読み替えます。
 
mV➡μAと読み替えるのがポイントです。
スイッチについていは人体の周波数特性が加味されていない電流値が10mAを超えないことを確認するものです。
スイッチを切り替えて、ローパスフィルタを介さない電流を電圧計で計測します。
高周波による生体作用は、電気的な作用では周波数に従い危険性は低下していくので、温熱作用が主体となっていきます。
そこで、熱的安全性を考える場合、皮膚の熱傷が起こる高周波電流の安全限界1W/cm2の値が重要となり、商用交流の電圧は100Vであることから、 I[A]=P[W]÷V[V]=1÷100=0.01[A]=10[mA] (∵P=V×I) この10mAを超えないことを確認することで、高周波による温熱作用の安全性を確認しています。

実際の制作

教科書どおりにつくってみました。 今回は図の切換えスイッチは取り付けない回路設定にしました。  

実際の回路を組んだ写真⬇

  かなりコンパクトにできました。 フリスクのケースで大きさを比較、かなり小さいです。    

容器は適当なものがあったのでそれを利用。

   

完成!!

実際にはこのように使用します。手書きですが・・・

まず接地漏れ電流測定です。

そして外装漏れ電流の測定方法です。

みなさんも是非制作してみてください。

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